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debsy

っていうか、許せない

っていうか、許せないのはおれたちの方なんだが……

 

 なるほど。俊冬がいない間の刺客回避方法として、副長をそんなところに閉じ込めたわけか。

 

「大丈夫。そこまで狭い部屋じゃないから。空気はちゃんとあるし、水とおむすびを置いてきた。

 月と星と厩の軒先にぶら下げている淡い灯火の中でも、おれたちはひどい

……。まあ、イケメンはピーもプーもしないのが通説だから、そこも大丈夫だろう」

「そんなわけあるかいっ!」

 

 ボケまくる俊冬に、脫髮先兆 力いっぱいツッコんでしまった。

 

「ジョークだよ。あの調子なら、朝まで目を覚まさない。念のため、桶は置いておいたから、万が一のときはそれでしのげるはずだ。というわけで、おれはそろそろわんこのところにいくから。兼定兄さんはここにいて」

 

 いろんな意味で理解に苦しんでいる中、俊冬は手を振ると踵を返してとっととあるきはじめた。

 

「、ちょっと待てよ」

 

 そのかれを、慌てて追いかけた。

 

 ドロンと消えてしまうまえに、もうすこし話をしたかったからである。

 

 島田たちも追いかけてくるかと思ったが、気配がない。

 頭をわずかにうしろへ向けると、その場に立ったままこちらをみている。

 

 気をきかせて二人きりにしてくれたのだろうか。いや、訂正。相棒もふくめて、にしてくれたのだろうか。

 

 たぶん、そうにちがいない。

 

「なんだい?」

 

 かれはポーカーフェイスを保ったまま、副長似のをこちらにわずかに傾けた。

 

 しかし、あきらかにイラついているし、不安がってもいる。

 

 いまのたった一言に、それらがにじみまくっていた。

 

「のところにいきたいんだろうけど、すこしだけいいか?」

「わかっているのなら、はやくすませてくれないかい」

「おれがいいたいことは、どうせわかっているんだろう?いまさら、口にだす必要もないよな?」

「どのこと?なにせきみは、だだもれしまくっているからね。さすがのおれも、特定するのはむずかしいよ。ねぇ、兼定兄さん?」

 

 副長のコピーのに、苦笑が浮かんでいる。

 

 を合わせず、おれの左脚許にいる相棒にそれを向けている。

 

「おいっ、いいかげんにしろよ」

 

 カッと来てしまった。

 

 いまのおれのになっているだろう。怒鳴った声は、低くなっていた。

 

 かれのが、こちらに向いた。

 

「すまない」

 

 かれは、唐突に謝ってきた。なににたいしてかはわからないが。

 

「きみがおれと話をしたい話題について、おれは話をしたくない」

「話をしてもらう」

「する気がない。きみがいくら望もうが願おうが、明日起こることにかわりはない。かえるつもりもない」「俊冬、ふざけるな。おまえは、俊春を護りたい。かれを笑顔でいさせたいっていったよな」

「ああ、いったさ。あいつと餓鬼のころに約束をした。だが、そんなものはもうどうでもいい。おれが護らなくっても、あいつは一人でやっていける。笑顔でいられる。おれは、もう必要ないってわけだ」

 

 かれの乾いた笑声が、乾燥しきった微風に絡まり、流れてくる。

 

「おまえが死んだら、俊春は……

「疲れたんだよっ!」

 

 かれは、おれの言葉をさえぎって怒鳴った。

 

 その怒鳴り声は、ずっとうしろにいる島田たちにも届いたらしい。

 

 わずかに「俊冬、ふざけるな。おまえは、俊春を護りたい。かれを笑顔でいさせたいっていったよな」

「ああ、いったさ。あいつと餓鬼のころに約束をした。だが、そんなものはもうどうでもいい。おれが護らなくっても、あいつは一人でやっていける。笑顔でいられる。おれは、もう必要ないってわけだ」

 

 かれの乾いた笑声が、乾燥しきった微風に絡まり、流れてくる。

 

「おまえが死んだら、俊春は……

「疲れたんだよっ!」

 

 かれは、おれの言葉をさえぎって怒鳴った。

 

 その怒鳴り声は、ずっとうしろにいる島田たちにも届いたらしい。

 

 わずかにもまた、副長のまんまである。

 

「あいつのことだ」

「断る。おれに頼むくらいなら、おまえがついていてやればいいだろう」

 

 そのときはじめて、かれを『おまえ』呼ばわりしていることに気がついた。

 

 ムカつきすぎていてわからなかった。

 

「あの雨の日にきみを追ってこの時代にきて、土方歳三にきみを託してから、あいつとおれは約束を交わした。というよりかは、変更のない作戦を立てた」

 

 かれは、おれがメンチ切りまくっているにもかかわらず、話をつづける。

 

 くどいようだが、『メンチ切る』というのは、相手をにらみつけるという意味である。

 

「おれが土方歳三として死ぬということと、あいつが‥」

 

 かれは、不意にそこで言葉を止めた。

 

 俊春が?

 

 はやく知りたい。俊春は、いったいだれのかわりに死ぬというのか?

 

 が、かれは口を閉じたまま開けようとしない。

 

 くそっ!俊冬、なにを焦らしまくっている?もったいぶっているんだ。

 

 兎に角、はやくいってくれよ。

 

「というわけで……

「どういうわけやねんっ!」

 

 永遠と思えるような焦らしの後、やっと口を開いたと思いきや、力いっぱいボケてきた。

 

 こんなシリアスなシーンだというのに、関西人のはイタすぎる。

 

 本能的に、全力でツッコんでしまった。

 

 かれとが絡み合いまくる。

 

 かれのをみつつ、かれの胸のあたりをどついた方が完璧なツッコミだったのに、とちょっと後悔をしてしまった。

 

「きみは、冗談抜きでファニー・ガイだな」

「いまのは最高の讃辞である、ととっておくよ」

 

 そして、また沈黙が訪れた。

 

「きみだよ」

 

 さすがは「わが道爆走王」である。

 

 唐突にいってきた。

 

「おれ?なにがおれなんだ?」

 

 笑いのなにか、か?

 

 そのとき、ふと点と点がつながって一本の線となった。

 

 それもまた、唐突にである。

 

「まさか・・・。まさか、おれなのか?」

 

 いまのおれのには、驚愕の表情が浮かんでいるだろう。

 

 その瞬間、副長激似の

 

 あまりにもきっぱりすっきりばっさりいうものだから、またしてもカッときてしまった。

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