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そこへ、軍議に参加していた主人が

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そこへ、軍議に参加していた主人が

そこへ、軍議に参加していた主人が、興奮を隠しきれぬ様子で戻ってきた。

急ぎ、この道を進み、怪しげな者どもがいれば躊躇なく討て、と。

何の説明もなく、だ。

 

もっとも、見当はつく。

この道は国司の親族、隆家様が住む馬木に続いている。

国司の家族、郎党が落ち延びようとしているか、こたびのことを早々に察知した隆家様が、物見を出してきているかだ。

 

主人の様子からすれば前者だろう。

とは言え、あれほどの軍勢に囲まれながら、落ち延びることなど出来るはずがない。

 

ならば取り囲まれる前に邸の外に出ていたのか――いや、理由など、どうでもよい。

首尾よく討てば桁違いの報奨と出世が手に入る。

皆がいきり立った。

だが、追手は我々だけではなかった。【脫髮先兆】頭髮變幼變薄?留意四大脫髮成因!

      

なにより、進めば進むほど奇妙なことが待ち受けていた。

 

穴が開き、落ちかけていた蔓橋。

崖崩れで塞がれた道。

下敷きになった馬や兵。

 

天を照らすほどの閃光と地鳴りを思わす振動。

無人の館。

いまだくすぶり続ける、谷をまたいだ巨大な砦とおぼしき残骸。

 

焼け焦げた岸壁。

そして黒こげになったいくつもの骸。

矛を手に累々と転がる屍。

 

あの砦らしき場所には、一体どれほどの兵が詰めていたことだろう。

それを殲滅し、進んでいった者がいるのだ。

 

――そして、この降り注ぐ矢だ。追っている相手が山賊などであるはずがない。

ましてや国司の一族郎党などであるはずがない。

なにより、月が一夜のうちに消え失せてしまうなど聞いたことがない。

 

我々の所業は、神の怒りをかっているのではないか?

 

――いや、そもそも、我々が追っているのは神そのものか、神に守られた者たちではないのか。

 

    *眠りをさまたげられた猿たちの奇声が響きわたる。

義久と姫は凄惨な光景が繰り広げられているであろう方向に目をやっていた。

 

「これで、しばらくは刻がかせげよう」

イダテンの言葉に、姫は胸の前で袖を重ね、義久は、あきれたようにため息をついた。

……おまえといると退屈せぬな」

 

義久の言葉にはかまわず、折りたたんだ油紙を懐から取り出す。

近くの岩に腰を下ろすと、姫も、かたわらに腰を下ろした。

 

義久は、対面の木陰下の岩に銀装の大太刀を立て掛け、そこに座った。

義久の顔色もイダテン同様に悪い。

油紙を開き、呪符を取り出す。

符だの中ほどは空白になっている。

 

義久に向け、呪符を五枚ほど差し出した。

「利き腕がしびれておる。この符だに、おれの血を使って文字を書いてくれ」

「なにをしようというのだ?」

姫は黙ってイダテンと義久の話を聞いている。

 

「こいつは『身代わり符だ』だ。特別な力が封じ込めてある」

義久が、呆けた顔で「なんだそれは」と口にする。

 

「この符だに血で文字を書くのだ。人の声を聞くと、この符だは血文字の主の姿をとり、ただ一度、その者そっくりの声で、書いたとおりのことを答える……これを崖の上から風に乗せて流せば、谷底や、対岸の山中にたどり着くだろう……うまく使えば、追手を分散できる」

姫が驚いたように呪符に目をやった。

 

「おお、聞いたことがある。おまえの母者は巫女としての力に加え、都から来た陰陽師を赤子扱いするほど呪法に優れていたと」イダテンは、それには答えず、急かすように、衣が破れ血が流れている右肩を義久に向かって突き出し、

「紙にはさみ、懐に入れているうちは反応しない」

と、つけ加えた。

 

義久は腰を上げようともせず唇を曲げた。

「わしは字がへたでな……それに筆を持っておらんぞ」

 

姫が立ち上がり微笑んだ。

その衣から、ふんわりと香しい匂いが漂ってくる。

一瞬とはいえ、ささくれ立っていた気持ちが癒された。

 

「なんと書けばよいのです?」

義久が、あわてた様子を見せたが、姫は気にする様子もなく、イダテンの熱を帯びた額に白く細い指をあて、流れる血を、そっと掬いとった。

 

冷たい指が心地よかった。

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