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入江は苦笑しながら頷いた。
「主の命令は絶対ですから。」
「ならば此度の件は不問に処す。キヨ,せいぜい親孝行する事だな。」
元周が手を離すと女将は床に額を擦り付けた。その姿を見てから元周はぐるりと周囲を見渡した。
「居辛い思いをさせてすまんかったな。【脫髮先兆】頭髮變幼變薄?留意四大脫髮成因!
だがお前達も心に留めておけ。噂話に踊らされるな。事実かどうかも調べもせんと面白おかしく話して回ると後々自分に跳ね返るぞ。
さぁこれで終い。千賀,帰ろうか。」
千賀はそうねと頷いてそっと元周に寄り添った。それから女将の方を振り返った。
「女将,この前お客さん達に勧められたお菓子は後日また買いに来るわ。では参りましょう。」
元周と千賀が店を出る際,侍女は丁寧に客達に頭を下げてから後を追った。三津と入江はあの人も大変だなぁと思いながら頭を下げて見送った。
「三津,私達も帰ろうか。」
「はい,帰りましょう。」
二人も本当にお騒がせしましたと周りに頭を下げて回って店を出ようとした時,
「お待ち下さいっ!この度はっ……!」
女将が二人に向かって謝罪をしようとしたが,三津はそれを遮った。
「キヨさん,私も改めて考えさせられました。自分ではそんなつもりは無くとも,相手の受け止め方は様々な事,真摯に受け止めて振る舞いには気を付けます。」
三津は謝られたくなかった。少なからず女将に対して罪悪感があった。自分達の作った関係に則れば入江とは不定関係ではない。だが嘘をついてるような気分だった。
入江に特別な感情を持っているのは間違いないのだから。
「私も,忘れていたのは本当に申し訳ないと思ってる。でも今回ちゃんと名を覚えたし忘れない。これで許してほしい。」
入江は帰ろうと三津の背中を軽く押した。それから二人は店を後にした。
三津は少し歩いた所で膝から崩れかけた。それを入江が脇から支えた。三津の体は今更小刻みに震えた。自分に向かって簪を振り上げた女将への恐怖が今になって這い上がってきた。
「少し休んで帰ろう。」
「へへっすみません。襲い掛かってくるかもって覚悟してても怖いもんは怖いですね。」
店に向かう途中,三津は元周に言われていた。
なるべく三津を立ち会わせること無く収めるつもりだ。入江と千賀が訪れた時点で嘘を認め謝罪すれば一番穏便に済む。そこで終わらなければ元周が出る。それでも無理な時は三津を呼ぶと。
「元周様達の前やから不利になる真似はせんと思ってましたけど,簪振り翳すなんて私だいぶ嫌われてますね……。」
三津はそれが結構傷付いたと悲しそうに笑った。入江は優しく三津の背中を擦った。
三津を危険に晒したくはなかったが,最終手段として三津に手を上げた所を取り押さえるしかなかった。
「傷付いたかもしれんが,それ以上に三津を慕ってくれる者は大勢いる。味方は沢山いる。だからその否定的なごく一部だけにわざわざ目を向ける事もない。
私だって……こんなに想ってるのに。」
入江は優しく肩を抱いて自分の胸にもたれさせた。それから顎を持ち上げてぐっと顔を近付けた。
「参謀,お前立場弁えると言っただろうが。」
元周の声にビクッと肩を揺らし,入江はゆっくり声の方へ振り返った。
「そうね,ここはまずいから続きは帰ってからにしましょ?」
千賀は若いわねぇと口元を隠して笑っている。三津は耳まで真っ赤て俯いた。
「帰っても続きはないですっ!」
三津は先に帰りますと早足で元周達の横を通り過ぎて前を行った。
「松子待たぬか。今日の礼をしてもらうまで帰らんぞー。今日はお前の作った夕餉を食べてから帰るぞー。」