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「三津……どうしよう……今朝の味噌汁は三津が作ったヤツじゃない……やる気が半減だ……。」
抱きついたままそう嘆く桂の頭をよしよしと撫でた。
「夜は必ず作りますよ。」
それじゃ駄目だと桂は強く三津にしがみついた。
朝の元気は何から貰えばいい?抱きつくだけじゃ足りないと駄々をこねだした。
「どうすればいいんですか?」 【脫髮先兆】頭髮變幼變薄?留意四大脫髮成因!
「私も三津の手を借りたい。」
三津は目頭を押さえた。ここでそう来たか。
「今?」
「今。手が駄目なら口でもい……。」
「まず朝餉を食べましょう。」
恐ろしい事を口走りかけたので食い気味に言うのを阻止した。
「え?口も借りれるの?朝餉食べたら借りれるの?」
勢い良く障子が開いて三津はビクッと体を揺らした。膳はフサが持ってくるものだと完全に油断していた。
「九一,邪魔するなと言っただろう。」
桂は三津にしがみついたまま不機嫌な顔を入江に向けた。
「ちゃんと米炊いてから来てます。文ちゃんがお米炊いたら行っていいって言ったそ。」
『文さん九一さんにお米炊かせたの……。』
完全に顎で使われてる入江が何とも切ない。そこへ文が顔を出した。文が来ると二人共大人しくなるのは確実なので三津はほっと胸を撫で下ろした。
「桂様,一応出来る限り引き止めましたので今朝はこの辺で。
あと広間に坂本様がいらっしゃるのお忘れですか?」
完全に忘れていた。広間で目を覚ましたら入江が居ないのに気を取られてその事ばかりで全く忘れていた。
桂は泣く泣く三津から離れて落胆しながら広間に向かった。
広間では何の違和感もなくみんなに馴染んで朝餉を食べる坂本の姿があった。
「桂さんお先にいただいとります!それにしてもここの連中は朝からよう食べるのぉ!」
「戦は体力勝負やけぇな。」
「薩摩との話が上手くいけば薩摩の名義で外国から武器を買うて長州に流せるんじゃ。それで私はその為の組織作りに忙しい。今は長崎を拠点に話を進めとるきまた戻らんといかん。」
「相変わらず忙しい人やなぁ。」
三津は坂本と対等に話せている高杉を初めて見直したかもしれない。三津の視線に気付いた高杉がふっと片口をつり上げた。
「何や三津さんじっと俺見つめて。惚れたか?」
「絶対ないですね。」
三津は満面の笑みで寝言は寝て言えと言い放った。
「可愛い顔して辛辣やのぉ。」
「でしょ?それで怒られるともうゾクゾクするんですよ。」
悦な表情で坂本に訴える入江の後頭部を三津はしゃもじで殴った。「あー分かる。私もどちらかっちゅうと嫁に叱られるの好きやき怒られても悦んでしまうで余計に怒られる。」
『まさかの坂本さんそっち側か……。』
「あっ面白い人こっちに居てたんやー。」
三津が顔を引き攣らせていると幾松と白石がひょっこり現れた。
「あれ?幾松さんおはようございます。早いですね。」
三津がぺこりと頭を下げるとこっちで朝餉を食べようと思ってとにっこり笑って坂本の隣りに腰を下ろした。二人が面識あるのにも驚きだった。
「おぉ!京の別嬪さん!あれや有名な芸妓さんや言うんは覚えとるがすまん名前何やったか?」
坂本はすまんすまんと笑う。不思議と失礼な感じがしないのはこの男の特権か。
「幾松ですよ。白石さん家で自己紹介したやないですかぁ。」
「そうやそうや!いやぁ色んな男から頭も器量も良い芸妓がおるっちゅうのは聞いとったんやがど忘れじゃ。」
白石邸で会ったと聞き三津と文はなるほどと頷き,更には幾松はそんなに有名なのかと感嘆の息を漏らした。それから三津はくるっと桂に振り返った。
「小五郎さん,こんないい人嫁にしないと勿体無いですよ?」